世界の不動産事情~家賃編~
前回のコラム『世界の不動産事業~価格編~』では、世界の代表的な都市の不動産価格を中心にお話をしましたが、今回は家賃についてみていこうと思います。
まず前回同様、日本不動産研究所による「国際不動産価格賃料指数」(2019年10月)の調査結果を見てみましょう。
この表は、東京港区元麻布にある住宅のマンション賃料(1戸の専有面積あたりの賃料単価)を100.0とした場合の各都市との比較指数です。
このように東京や大阪と比べると、ロンドン・ニューヨーク・香港・シンガポールが高いことが分かります。
では、この4つの街の特徴をみてみましょう。
ロンドン
最も高いロンドンは綺麗な街並みが特徴的ですが、この街並みを維持する為に住宅価格が高騰しているという現状もあります。景観保護のために住宅の建築を制限しているため、少ない土地で大人数を収容できる高層マンションが建てられないのです。
また、富裕層の外国人が家賃収入を得るためにロンドンの建物を購入することが多く、需要と供給のバランスが取れていない状況に陥ってしまっているのです。
このように、家賃が高すぎることから、ロンドンでは社会人でも1人暮らしをするのは難しく、単身者は複数人でシェアをすることが多いです。
ニューヨーク
続いて高い値となっているのがニューヨークです。
ニューヨークでは、市民の3分の2近くが賃貸物件に住んでいると言われており、その世帯数はアメリカ全体の平均世帯数の2倍以上となっています。
そしてニューヨークの中心地マンハッタンの2019年1~3月期の平均家賃は、史上最高となる3,217ドル(約35万円)でした。マンハッタンの中で最も家賃が安いのは島の最北端のインウッド地区ですが、それでも1か月1,623ドル(約18万円)を支払っているといいます。
これだけ高くても、住みたい人が絶えない人気の街となっています。
香港
そしてアジアで最も家賃が高いのが香港です。
前回ご紹介した通り、香港はマンション価格が世界で最も高額となっています。
その理由として、人口密集地で需要過多であることと、中国人富裕層の投資目的による不動産購入とされています。
2019年のアメリカの調査によると、香港の平均家賃は1か月2,777ドル(約31万円)でした。香港や中国では一般的に家賃が安ければ安いほど家が汚く使われるというデータがあるほど借家を汚く使う人が多く、大家さんが価格を下げたがらないということもあります。安く貸すぐらいなら空き家のほうが良いということで、需要過多とされている香港でもこのような空き家は多いといわれています。
シンガポール
続いてのシンガポールは、政府主導の経済戦略により、海外から積極的に企業や有能な人材を誘致し、投資資金の流入を促すことで経済成長を遂げてきました。その為、外国人居住者が多くいます。
シンガポールは持ち家率が高く、約8~9割と言われています。これは政府がHDBというマンションを購入する人に対して補助を行っているからです。条件にもよりますが一部屋あたり300万円前後の補助を受けることができ、住宅購入の頭金に充当できます。その結果、賃貸住宅に住むのはほとんどが外国人ということになります。
外国人の多くが住んでいるのはコンドミニアムという日本の高級マンションのような住宅です。コンドミニアムにはどんなに安くても月々の家賃に20万円以上かかるのが一般的で、40万円前後かかることも多いです。
まとめ
日本で最も家賃が高い東京と比べても、ロンドンやニューヨークではさらにその倍近くの家賃であることが分かりました。家賃が高くなっている理由は、需要過多や人気の都市であること以外にも、それぞれの地域の政策が関わっていたり国民性も関係しているのかもしれません。
今まさに新型コロナウイルスによって深刻な被害を受けているニューヨークでは、少なくとも50万人の失業者が出るとみられ、市民の約4割が家賃を支払うことができない事態に陥っていると先日報じられました。政府は支払いの猶予を設けるなどの対策をしていますが、今後更なる措置が必要となるでしょう。
日本でも、多くの企業が休業や自粛を余儀なくされている状態なので、不動産業界にも影響が出てきています。今後の政府の対策に注目していきましょう。