コロナ禍での不動産市場は?
新型コロナウイルス感染の広がりによって、さまざまな経済活動の自粛・休止から世界規模で大きな影響が出ています。そのダメージはリーマンショックを超えると言われており、日本の不動産市場にも相応の影響が出ていることが考えられます。
そこで、このコロナ禍で、実際どのように不動産市場が変化しているのかをデータから読み解いていきます。
成約件数・成約価格
まず、近畿圏不動産流通機構が発表している成約件数を見てみましょう。
売買、賃貸ともに、緊急事態宣言が出された4月は、外出自粛による来店客の減少や、業者の在宅勤務の影響から、大幅な落ち込みが目立ちます。
売買の4月の契約件数は、中古マンションの減少率(前年比マイナス42.3%)が最も大きく、中古戸建(同37.8%)、土地(同28.7%)、新築戸建住宅(同20.9%)の順となり、いずれも2ケタの大幅減となりました。
投資用なども含む中古マンションは景気の感応度が高く、需要側の様子見姿勢がより強いとみられます。
そして賃貸マンションは、前年比マイナス16.6%と、売買に比べると減少率は少なくなっているのが分かります。
しかし、どちらも緊急事態宣言解除後の6月には取引が急速に回復しており、土地を除きほぼ前年並みの水準を取り戻しています。
続いて、成約価格を見てみましょう。
売買を見てみると、同じく4月の緊急事態宣言が出された時期に、土地以外のものが落ち込んでいるのが分かります。
中古戸建(前年比マイナス13.0%)、中古マンション(同6.1%)、新築戸建(同3.1%)の順で下落しました。
これは、需要が中心の中古戸建価格は、相対的に高額物件の取引が鈍化したものだと思われます。
そして、賃貸マンションの成約賃料は、コロナ禍でもあまり変動がないのが分かります。
不動産価格指標
では、不動産価格自体はどうなっているのでしょうか?
国土交通省が発表している年間約30万件の不動産取引価格のもとに不動産価格の動向を指数化した「不動産価格指数」の推移を見てみましょう。
成約件数や成約価格には、緊急事態宣言が出された4月に大きな変化が見られましたが、不動産価格を見てみると、6月までのデータには大幅な変化はなく、ほとんどコロナの影響は出ていないことが分かります。
今後、住宅ローンが支払えなくなり、住宅を手放す人が増えることが価格下落の圧力になるという見方もありますが、現状を見る限りすぐに下落する可能性は低いと言えるでしょう。
まとめ
未だ世界中で大きな影響を及ぼしているコロナウイルスですが、不動産業界にも少なからず影響が出ています。成約件数や成約価格には大幅な減少が起こりましたが、それは緊急事態宣言に伴う外出自粛による来店客の減少や、コロナ禍における様子見の姿勢があったからだと思われます。しかし、緊急事態宣言解除後には数字も回復してきています。
そして、不動産価格にはまだそれほどの価格変動は起こっていません。
今後の不動産市場においては、コロナウイルスの再拡大だけでなく、2022年の生産緑地放出による需給バランスの変化問題など、ネガティブな懸念要因があります。このような不安要素もあることから、2025年に大阪万博というビッグイベントが控えているとはいうものの、大阪の不動産価格が大きく上昇するということは予想しづらいという状況です。
今現在、コロナ禍の影響は一過性のものであったと考えられますが、今後不動産に大きな影響がないとは断言できません。
不動産投資をするうえで、いつ何が起こるか分からないというようななかで、状況をしっかりと見極める力が大切になってきます。