知っておきたい法改正『水害のリスク説明』とは
日本はかねてより「災害大国」と言われてきていましたが、今や数十年に一度という災害が毎年のように頻繁に起こっています。特に水害に関しては、台風に限らず、集中豪雨や長雨などでも注意が必要になってきています。
記憶に新しいところでは、今年の7月に発生した集中豪雨により、熊本県を中心に九州や中部地方に大きな被害が出ました。
また、2019年には、台風19号によって河川氾濫や土砂災害などが相次ぎ、九州地方から東北地方にかけての広い範囲で多くの犠牲者が出ています。
このように、年々水害の被害が増えてきているため、今年の8月28日より、国土交通省は宅地建物取引業法施行規則を改正し、不動産取引時の重要事項説明の際に「水害リスク情報の説明」を義務付けました。
今回は、この「水害リスク情報の説明」が具体的にどのようなものなのかをみていきましょう。
説明内容は?
そもそも重要事項説明とは、売買契約・賃借契約・委託契約に際して、あらかじめ知っておくべき最小限の重要な事項を、消費者(お客様)に対して説明することです。
今回説明が義務化された、「水害リスク情報の説明」とは具体的に以下のようになります。
・水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
・市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
・ハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
・対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
ハザードマップの信頼性は?
上記のように、水害のリスク説明には、各自治体が作成しているハザードマップが用いられるのですが、その信頼性はどれほどなのでしょうか?
今年の7月に発生した豪雨災害では、九州を中心に82名が亡くなり、行方不明者4名、そして約1万8,000戸に被害が出ました。その被害状況をみると、多くはハザードマップなどでリスクの高い場所と公表されているエリアで起こっています。また、亡くなった人の9割はハザードマップで濃い色に塗られたリスクの高いエリアで発生しているとする防災専門家が多いようです。
また、これまでの大規模災害を見ても、同様のことが当てはまります。平成30年7月に発生した西日本豪雨は、長期に渡る雨により河川氾濫や土砂崩れなどが発生し、多くの犠牲者を出した甚大な災害でした。この時も、浸水範囲はハザードマップで示されている浸水予想区域と概ね一致しています。
これらのことから、ハザードマップは概ね信頼性があるとされています。
しかし、ハザードマップ上の浸水想定区域に該当しないからといって、災害時に安全だというわけではありません。ハザードマップが100%正確であるとは言えませんし、記載内容は今後変更されることがあるということも、説明する際にきちんと伝えることが望ましいとされています。
まとめ
近年頻発している水害による被害に対応すべく、今回の法改正が行われました。
併せて、各自治体は洪水、津波、地震、土砂災害等、様々な種類のハザードマップを作成したりと、日本では年々防災意識が高まっているのが分かります。
今回、重要事項説明時に「水害リスクの説明」が義務化されましたが、この重要事項説明が契約前に行われるとはいえ、契約直前まで話が進んだ時点で水害リスクを知り、その物件はやめるということになると、それまでに費やした時間や費用が無駄になってしまいます。
また、今後一軒家などは、ハザードマップの位置によっては価格・価値に変化がおこるかもしれませんね。武蔵小杉のタワーマンションも水害で機能不全になり価値を下げた経緯があります。ですから、ハザードマップを各自治体のホームページ等で、賃貸や売買不動産を検討時には、事前に確認しておくとよいでしょう。
災害から身を守るためにも、いざという時に損をしないためにも、防災意識を高めハザードマップの活用をオススメします。