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コラム

相次ぐ自社ビルの売却

コロナウイルス感染症の影響からか、大企業の自社不動産売却が相次いでいます。

中でも、音楽業界大手の「エイベックス」や国内最大手の広告代理店である「電通」の本社ビル売却は大きなニュースとなりました。

また、最近では旅行業界大手「JTB」が東京の本社ビルを含む自社ビル2棟を売却していたことが分かりました。

何故このように、大手企業の自社ビル売却が相次いでいるのでしょうか?

 

大企業が検討を進める「本社ビル売却」

エイベックスは2020年12月、電通は2021年6月に、それぞれ本社ビル売却の方針をまとめました。ただし、いずれもビルからは退去せずに、売却先からビルを借り戻して利用を続けています。これを「セール・アンド・リースバック」と言います。旅行会社JTBやHISも、同じ手法で自社ビルを売却しています。

 

本社ビル売却について、エイベックスは「経営資源の有効活用と財務的柔軟性の確保」「オフィスでの勤務を前提とした従来の働き方の見直し」を目的とした取り組みの一環と発表しました。

また、電通は「合理的で機動的な組織構造」「恒久的なオペレーティングコストの低減」「バランスシート効率化の加速」と発表しています。

しかし、ビル売却前は両社ともに大きな赤字を計上していたので、実際はやはり、コロナ禍による「業績悪化」に対応する必要があったからではないでしょうか。

 

その他にも、保有不動産を売却して、賃貸契約を結び直すような企業が増えています。これまでは大型オフィスビルが中心でしたが、直近では、工場や物流施設などにも対象が広がっています。

そもそも自社ビルや自社工場は、大企業が『自己所有の不動産を持っている事』でビジネスパートナーに、より信頼されるツールでありトレンドでした。

また、自社保有の不動産を所有することで、不動産の減価償却費や付随経費を計上できる為、節税になるうえ、賃貸に出すフロアでは賃貸収入を得られるという一石二鳥のアイテムであったのです。ただ、所有している企業自体が赤字では話になりません。

経営資本回復のために、一番に売却されるのは当然かと思われます。

 

自社ビルを売却すると?

先述した「セール・アンド・リースバック」で自社ビルを売却すると、どのようになるのでしょうか?

 

売却益による資金調達が可能

物件にもよりますが、基本的に自社にとって最大限の資金調達を見込んだうえで売却に踏み切ることが多いです。この売却益により、借入金の返済や投資資金の確保が可能となり、その結果、自己資金比率や総資産利益率の向上が期待できます。

手元のキャッシュを増やすことで資金繰りを安定させたり、会社の成長のための新たな投資資金に充てることも可能です。

例えばエイベックスでは、2021年3月期で既に290億の売却益を計上しており、その結果、最終損益で約100億円以上の黒字となっています。また、電通では、約890億の売却益を計上できると言われています。

 

テレワークを中心とした働き方への移行とマッチする

コロナウイルスの感染対策として多くの企業で導入されたテレワークでは、出社する社員が大幅に減少し、オフィススペースが余分になる企業もあります。このテレワークは、感染対策だけでなく通勤時間の削減やワークライフバランスの実現にもつながることから、コロナ終息後も継続する企業は多いと考えられます。売却することによって、余分なオフィススペースを無くすことで経営のスリム化へつながります。

 

まとめ

自社ビル売却の背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大による業績不振や経営不振によりやむなく手放すといったネガティブなケースも目立ちます。

一方で、業績とは関係なく、時代の変化でテレワークが進み、都心部に労働拠点は必要なものの、必要な規模が縮小されていく可能性が高いと予測し、不動産を売却している動きもあり、大企業の自社ビルに対する「行動変容」が起こりつつあるのが伺えます。

売却することによって新たな投資資金につながったり、経営のスリム化に効果的であるなどポジティブな要素も多くあります。今後、どれほどテレワークが浸透し、働き方が変わっていくかによって、日本のオフィスビルの在り方が変化していくでしょう。

 

また、都心部のオフィスが売却され、解体されると、そこには何が生まれるのでしょうか。

未来を想像してみるのもいいかもしれません。

 

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