不動産投資はなぜ相続税対策になるのか
2019年3月に税制改正が行われたことによって、相続税の節税対策が注目されています。そこで今回は不動産投資による相続税対策についてご紹介いたします。
相続税とはどのようなものなのでしょうか?
相続税とは、遺産を相続した人に課税される税金です。これは、亡くなった人の親族だけとは限らず、遺産を受け取った人に課税されるものです。しかし、相続すれば必ず課税されるというわけではありません。遺産総額から基礎控除額と呼ばれる一定の金額を引いた残りの金額に対して課税されるので、遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税は課税されないのです。
この基礎控除額とは、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。法定相続人とは以下のように定められています。
第1順位の人がいなければ第2順位の人が法定相続人となり、第2順位の人もいなければ第3順位の人が法定相続人となります。配偶者は常に相続人となりますが、法的な婚姻関係にあることが必要であり、内縁や事実婚は法定相続人にはなりません。また、相続人は遺産や債務を放棄することもできますが、相続税の計算では相続放棄した人も法定相続人の人数に含めます。
例えば相続人が配偶者と子2人の場合、「3,000万円+600万円×3=4,800万円」が基礎控除額となるので、遺産総額が4,800万円以下であれば相続税申告はしなくてもよいのです。
なぜ不動産投資で相続税対策になるのか?
相続税対策において不動産が有効なのは、法律で決められた「財産評価額の引き下げ」という仕組みを利用できるからです。では、「財産評価額の引き下げ」となる理由をみていきましょう。
土地・建物の評価額が下がる
土地の評価額は、実際の取引価格ではなく国税庁が決定している路線価、または自治体の定めた固定資産税評価額に基づいて計算します。目安としてはだいたい80%程に評価額を抑えることができます。
建物の評価額については、実際の取引価格ではなく固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。こちらは築年数によって変わりますが、一般的に50%程に評価額を抑えることができます。
不動産を第三者へ賃貸することにより評価額が下がる
現金よりも不動産を所有しているほうが相続税評価額を抑えることができますが、所有している不動産を人に貸している場合はさらに相続税評価額から30%程が控除されます。人に貸している土地や建物は所有者が自由に使用することができない為です。
債務控除を利用する
ローンを組んで賃貸不動産を購入することでも、相続税を減らすことができます。相続税の課税評価額を算出する際には、プラスの財産からマイナスの財産を引く債務控除をおこないます。ローンを組んでいると、被相続人の負債となるので債務控除の対象となり、相続財産からマイナスすることが可能です。しかし、繰り上げ返済してしまうと負債が少なくなるため、相続税の課税評価額を下げることはできないので注意が必要です。
小規模宅地等の特例を適用する
小規模宅地等の特例とは、亡くなった方が居住していた土地や、事業に使っていた土地について一定の条件を満たせば50%または80%減額される特例です。
詳しくはこちらの国税庁のホームページから確認できます。
実際どのぐらい引き下がるのか?
現金を相続した場合と、現金を不動産にかえて相続した場合の相続税評価額を比べてみましょう。
マンション2,000万円(土地価格1,000万円・建物価格1,000万円)
土地:1,000万円×80%×70%×50%=280万円
建物:1,000万円×50%×70%=350万円
⇒土地と建物の評価額:630万円
このように、現金の場合相続税評価額はそのまま2,000万円となりますが、不動産へかえることによって、約3分の1に引き下げることができます。
まとめ
このように、不動産を用いた相続税対策は節税効果が大きいです。しかしその反面、失敗してしまった時のリスクは大きくなります。不動産投資は本来長期的な運営により収益を上げるものですので、空室やローンの金利上昇等のさまざまなリスクと向き合わなければなりません。節税だけの目的で不動産投資を行なうのではなく、長期的な計画をたてることが大切です。まずはどのくらいの相続税がかかるのかを知り、ご自身に合った相続税対策を選択しましょう。