法人・個人事業主における「経費」とは
先日、チュートリアルの徳井さんが所得隠しや申告漏れを国税庁から指摘された問題で、連日ワイドショー等を賑わせていました。徳井さんは自身の会社「チューリップ」を設立し、吉本興業からこの会社を通してお給料を受け取っていました。なぜわざわざ会社を設立していたのか、この問題から分かる法人と個人事業主における「経費」の違いを見ていきたいと思います。
法人を設立するメリットは?
まず、「所得税」と「法人税」の大きな違いは、税率が異なることです。
個人事業主であれば、売上高から必要経費を差し引いた利益がそのまま自分の所得となり、これに対して「所得税」が課されます。
「所得税」は累進課税な為、所得が増えれば増えるほど税率が高くなっていきます。高収入の場合、約半分が税金として徴収されてしまいます。
一方法人は、会社の利益に対して「法人税」が課されます。この会社の利益というのは個人事業と同様に、売上高から必要経費を差し引いて計算されます。
法人税は年度ごとに見直され、開始事業年度等により多少異なりますが、法人区分に応じて下記の通り一律で決まっています。
つまり、事業の利益が何千万、何億というように高くなってくると、法人の方がこれらの
税率の差による節税効果はかなり大きいものとなります。
次に、個人事業主と法人では「経費」とされる範囲が異なります。法人では、個人事業主が計上できる経費にプラスアルファで下記のような出費も経費として計上することができます。
給料
自分や従業員への給料も経費として認められています。退職金も含まれます。
保険料
個人事業主は、生命保険料は所得控除として所得額から引かれることはありますが、経費としてではなく、また12万円が限度です。法人の場合、生命保険料は経費として上限なく計上できます。
家賃
個人事業主は、自宅兼事務所として賃貸マンション等を借りたとしても、事業で使用する割合の家賃しか経費となりません。
法人の場合は、会社名義で物件を借りると、社宅として家賃の8割程度を経費として計上できます。また、会社名義で購入した場合は、借入金の利息、不動産所得税や固定資産税、修繕費なども経費として計上できる場合もあります。
代表的なもので上記のようなものが挙げられます。もちろん事業への関連性を合理的に説明できる範囲内にはなりますが、このように経費とされる幅が広がる為、課税対象額を減らすことができます。
徳井さんは何をして問題になったのでしょうか?
個人的な買い物を経費にした
約2,000万円もの個人的な支出を会社の経費にしていたとされています。法人は経費の幅は広いといっても、個人的な買い物や旅行は経費として認められません。
申告をしていなかった
2016年~2018年の3年間で約1億円の所得(利益)があるにもかかわらず、申告をしていなかったようです。
さらにこの期間以前にも、税務署からの督促を再三受けていながら申告をせず、3年分まとめて出すということを何度か繰り返していたようです。
これらの原因は自分のだらしなさやルーズさの為だと説明していましたが、おそらく節税の為に会社を設立しているのに、何年間も申告すらしていなかったというのはやはり違和感を覚えます。人気が出て所得も高くなるにつれて、自分で働いて得た収入を税金で取られてしまうのが勿体ないと感じていたのではないでしょうか。
国民の義務である「納税」ですが、日本人の納税意識は世界各国に比べ低いとされています。今回の問題は、このことが顕著に表れた出来事であったと思います。
まとめ
ここまで法人化したほうが節税対策になるとお伝えしましたが、一概に得だとは言えません。法人化するには、設立・維持・解散に費用がかかる等のデメリットもあります。
例えば、法人化するにあたって株式会社を設立する場合だと20万円以上かかります。また、赤字であっても法人住民税の均等割を支払わなければなりません。その他税理士等の専門家を雇う費用等もかかってきます。そして、実は一番のポイントは、法人に貯まった利益は法人の事業目的の為に使用しなければならないという点です。つまり、法人税の方が支払う税が安いからといって法人に利益を計上すると、その法人のお金となり個人としては使えないということになります。節税対策として法人化を考えている方も、上記のようなデメリットを十分賄えるメリットが見込めるかを考慮するようにしましょう。
最後になりましたが、節税を目的とした見せかけの事業、開業は脱税行為の入り口です。「国民の義務」である納税に関することなので、ルールを知るだけでなく、個々がしっかりと考える必要があることと言えるでしょう。