民泊営業の各方面の今
近年、Airbnb(エアビーアンドビー)などの普及や訪日外国人の増加をきっかけに「民泊」に注目が集まっています。
そこで今回は「民泊」について、その仕組みや問題点、各方面の取り組みなどをご紹介したいと思います。
民泊とは何なのか?
ホテルや旅館などの宿泊施設ではない一般住宅やマンションに、旅行客を宿泊させることを「民泊」と言います。日本では、この「民泊」が新たな成長産業の一つとして各方面から多くの注目を集め、事業はどんどん盛んになってきていました。
その理由として、
訪日外国人客増加による宿泊施設不足
日本は現在、観光によって国を支える「観光立国」の実現に向けて訪日外国人数を2020年までに4,000万人、2030年までに6,000万人を目指す計画を立てています。2019年には3,188万人を突破し、年々訪日外国人は増加しています。
2020年には東京オリンピック、2025年には大阪万博を控え、今後さらに訪日外国人が増加することは確実とされます。しかし、急激に観光客が増加したことで、ホテルの予約が取りにくくなるという問題が発生していました。2018年の1年間の東京都の客室稼働率は80.3%、大阪府は79.8%と、都市部を中心に高い稼働率の状態が続いています。そんな中、「民泊」は既存のマンションやビルの個人宅の空き部屋を旅行者へ貸し出すことを可能にすることから、宿泊施設不足を解決する手段として有効とされています。
空き家活用など地方創生へのきっかけ
2018年の調査では、空き家数846万戸、空き家率は13.6%と年々増加し問題となっています。
一方で、日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少を続け、2048年には9,913万人と1億人を割り、2060年には8,674万人まで減少すると言われています。人口が減少するということは、家に住む人が減っていくということなので、今後益々空き家問題は大きな問題となることは確かです。
このような空き家問題に対し、民泊は空き家を活用し宿泊施設として再生させることができるのではと期待されています。
このようなことから、各方面から「民泊」が注目され、今のように広く知れ渡るようになったのです。
「民泊」が増加することにより起こった問題点
民泊が流行り始めたばかりの当時の日本では、宿泊料をもらって人を宿泊させる営業は、旅館業法によって営業許可を得る必要がありました。当然、民泊を行う際にもこの届出は必要であったのですが、一般の住宅が旅館業の許可を得ることは容易ではなかったので、許可なく民泊を行うケースが多くありました。
さらに、近隣住民からの下記のような苦情も多く寄せられるようになりました。
セキュリティへの不安
見知らぬ外国人が入れ代わり立ち代わりマンションに出入りする為不安。
部屋のドアを間違えて開けられそうになる。
騒音
部屋で騒ぐ音や声がうるさい。
深夜のドアの開閉音や足音がうるさい。
間違えて違う部屋のインターホンを押す。
ゴミ出し
分別をしない。
指定の日以外に大量に出す。
連絡先が分からない
民泊の運営者が分からないので、苦情の連絡先が分からない。
このような状況をふまえ、一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図る為に平成29年6月「民泊新法」が制定されました。この法律により一定のルールの下であれば、都道府県への届出を行えば、民泊の営業を行えるようになりました。
この改定により届出のハードルを低くし、きちんとしたルールの下で民泊をおこなってもらい、トラブルや違法民泊を減らす目的でした。しかし、現状は、規制の厳しさや煩雑な届出の手続きを嫌う人などによって、届出はさほど増えていません。それに伴い、近隣住民とのトラブルもあまり解消されていません。
管理会社の対応
先程ご説明した通り、マンションで民泊が行われていると他の入居者からのクレームに繋がりやすいので、管理規約に民泊禁止としているところも多くあります。しかし、禁止していても賃貸管理会社や近隣住民に許可を取らず民泊を行う無断民泊も横行している状態です。
無断民泊が行われていることを発見するのは難しく、入居者からのクレームが入って初めて分かることがほとんどです。
なぜなら、「Airbnb」などの民泊サイトには、具体的な住所や物件名は掲載されていません。室内の簡単な写真や使用料金、ルール、大まかな位置、部屋の広さ、設備ぐらいしか掲載せず、予約が決まった人にしか詳しい情報は教えないのです。
対策方法として、一つは、現地を巡回することです。実際に借主以外の利用者が部屋を利用している現場を押さえることが一番効果的なのです。しかし、これは当然大変な時間と手間がかかってしまうので、こまめに行うことは難しいでしょう。しかし、入居者に頻繁に注意喚起を行ったり、「最近民泊で利用しているような部屋を見たことがないか」などというアンケートを配ったりして、「ここでは無断民泊はやりにくいな」と思わせることも効果的です。
そして、無断民泊に悩む大家さんや不動産管理会社の為に、民間の違法民泊取り締まりサービスもあります。また、近年では公的な行政機関でも違法民泊を取り締まろうという動きが活発になっています。市区町村によっては、無断・違法な民泊運営への対応をとってくれるケースがあります。さらには、軽井沢では町内全体で民泊禁止とするなど、それぞれの自治体で民泊に厳しい対策をとっているところもあります。
まとめ
近年の外国人観光客や空き家の増加の対策としても、大きな注目と期待がされている「民泊」ですが、まだまだグレーな部分が多くしっかりとした運営対策を整えられていない現状です。近隣住民や大家さんからのクレームも多く、まだまだマンションの資産価値を落としてしまうイメージがあるので、更なる改善が必要であると感じます。
これから日本で行われる東京オリンピックや大阪万博などのビッグイベントに向け、上手く「民泊」を活用できるような取り組みが期待されます。