中国発『不動産バブル崩壊』は起こるのか ~その2~
前回のコラムでは、中国不動産の成り立ちや、「恒大集団」の経営難により中国が不動産バブル崩壊の危機であることをご説明いたしました。
今回は、中国の不動産バブルが崩壊するとどうなるのか、世界や日本へどのような影響が及ぶのかを考えていきたいと思います。
不動産バブルが崩壊するとどうなる?
恒大集団などの中国のいくつかの大手不動産会社は、変わらず現在もデフォルトの危機にあります。恒大集団はますます厳しい状況であり、破産は事実上のカウントダウンに入っていると言われています。このまま本格的なデフォルトに陥った場合、世界経済にさまざまな経路でマイナスの影響を与えることが考えられます。
まず一つは、経営破綻に陥った中国企業の社債などを保有する主要先進国の金融機関が直接損失を被ります。ただ、恒大集団の社積を購入しているのは一部の外国人を除き、ほとんどが中国在住の中国人であるとみられ、その損失は限られた範囲にとどまると思われます。つまり、恒大集団などのデフォルト自体が、リーマンショックに匹敵する世界的な金融危機を発生させるものではないと思われます。
一方、世界経済に対しての間接的な影響は軽視できません。デベロッパーのデフォルトは、中国経済を支えてきた不動産市場に対して不安視する動きが広がり、市場を悪化させます。それにより、中国経済の減速は一段と鮮明になり、中国の個人消費は減少し、設備投資も落ち込むことが考えられます。
日本をはじめドイツや韓国、アジア新興国など、中国経済に依存する国の経済は大きく足を引っ張られ、世界全体でGDP成長率が低下する恐れがあります。
具体的には半導体、自動車、産業用ロボット、パソコンなどのIT機器、鉱物資源、中国から海外への観光需要などが落ち込む恐れがあります。世界経済における中国の存在感が大きくなってきただけに、中国経済の減速が世界経済に与える負の影響は軽視できません。
また、今後の展開として懸念されるのは、2015年夏に起きたチャイナショックの再来です。当時、飛躍的な経済成長を遂げ、世界第二位の経済大国となっていた中国が、景気失速懸念や政策変更、シャドーバンキング問題などから、人民元や中国株の急落を招きました。中華人民銀行は人民元切り下げや金融緩和を実施しましたが、景気は減速し、それが世界各国の金融市場に伝播して、為替相場急落などの混乱を招きました。
現在の世界経済を取り巻く不確定要素は、当時より増加しています。「エネルギー危機」と呼ばれるほど、天然ガスや石炭、原油などの需要がひっ迫し価格が高騰しています。また、国ごとに違いはありますが、新型コロナウイルス感染再拡大によって物流・人流が絞られた影響も残り、世界的に供給制約が深刻となっています。
そうした状況下で、中国の不動産バブルが崩壊し中国経済が急減速すると、チャイナショックと同様のマイナス影響が世界に波及すると思われます。デフォルトの増加で、中国国内の資産運用商品の価格が下落すると、個人の金融資産が失われ、消費も減少するでしょう。中国事業を強化してきた主要国の企業実績は悪化し、世界経済が減速する可能性があります。
その中で、中国の不動産会社が相次いでデフォルトし不動産バブルが崩壊すると、中国では資本効率性が低下していき、投資に依存した経済成長は限界を迎えつつあることが鮮明になってくるでしょう。バブル崩壊後の日本の教訓をもとに考えると、いかに成長期待の高い新産業を育成して新しい需要を創出するか、中国政権の経済運営の実力が問われます。
中国経済の減速リスクは、日本をはじめ世界経済に逆風です。近年の不確定要素が増加するなかで、世界の情勢にも目を向けて中長期的な対策を行うことが大切であると思います。
また、何よりも忘れてはならないのが、中国自体は一党独裁国家であり共産主義国であることです。チャイナショック時もそうでしたが、自国を守る為には世界経済は二の次で、国家レベルで数々の経済操作が行われました。何より大切なのは、マスコミやニュースだけにとらわれず、しっかり経済を見ることで、自分の資産を守り抜いていくことではないでしょうか?