中国バブル崩壊の足音
中国は、低迷する不動産市場を救済する施策として様々な案を検討し、数カ月前まで話題になっていました。当時は不動産市場の低迷が長期化したことで、不動産会社や関連する企業の経営に対する不安が強まって、中国経済全体、世界経済への影響も懸念されました。今回は、中国の不動産市場のその後の状況について詳しくお伝えしていきます。
そもそもなぜ不動産危機に陥ったのか
中国の不動産危機の引き金となったのは、2020年のコロナ対策による金融緩和で不動産価格が急騰したため、政府が不動産デベロッパーに対して債務管理強化の施策を導入したことです。この施策により、大手の恒大集団(不動産開発業者)を含む一部デベロッパーの資金繰りが悪化し、物件の施工が遅れ、買い主への引き渡しが滞るようになりました。中国では主に住宅の完成前に代金の一部を支払う「事前販売制」がとられていますが、物件の引き渡しの遅れに不満を抱いた買い主の間で、住宅ローンの支払いをボイコットする動きが2022年7月以降広がり、不安からの住宅の買い控えと併せて、不動産市場の悪循環が一気にすすみました。
長期低迷下する中国の不動産市場
中国では不動産不況に終わりが見えません。販売面積は直近ピークの6割ほどまで減少し、価格も下落を続けています。そこで現在、中国は低迷する不動産市場を救済する試みの一つとして、全国の地方政府に数百万戸の売れ残り住宅を買い取らせる案を検討しているようです。住宅在庫の解消を図る試験的なプログラムを既に幾つか実施していますが、今回の計画はより大規模なものとなります。この計画が最終的にまとまるまで数カ月を要する可能性があるとされているので、今後も動向を見守りたいと思います。
今後の展望
今後の中国経済は、不動産市場が持ち直せるかが最大のポイントとなりそうです。
IMF(国際通貨基金)では、今後の中国の不動産投資は2022年の水準を30%から60%下回る可能性が高く、回復は極めて緩やかになるとしています。そうなれば今以上に雇用状況が悪化し、消費の低迷などによる他産業への影響も懸念されます。対応が遅れれば、1990年代の日本の不良債権問題のように企業や銀行の経営がひっ迫してくると考えられます。
中国の国会に相当する機関の全人代(全国人民代表大会)では、2024年の経済成長率目標を5%前後に設定しましたが、李強首相は目標の達成が「容易ではない」と危機感を示しています。中国ではGDP(国内総生産)の約3割を不動産業が占めることから、経済の回復に不動産市場の持ち直しは不可欠です。今後、中国が不動産に関する不良債権問題にどのように対応していくかが重要になりそうです。